犬の去勢について
犬の去勢についてのお話です。
去勢手術とは、オス犬の精巣を摘出する手術のことです。
去勢手術の目的(メリット)
1 病気の予防
男性ホルモン由来の疾患を予防できます。以下に、予防できる疾患を挙げていきます。
- 前立腺肥大症
ひどくなると排尿排便障害、血尿を起こします。 - 肛門周囲腺腫
肛門周囲の腫瘍です。大きくなると出血をすることがあります。 - 会陰ヘルニア
うんちが出しづらくなる病気です。 - 精巣腫瘍(セルトリ細胞腫)
悪性度が高く危険な腫瘍です。
2 発情に伴う問題の軽減
マーキングやマウントなどの行動を軽減できる可能性があります。
デメリット
1 全身麻酔のリスク
手術をするにあたっては、全身麻酔をかけなければいけません。若い子では低いですが、ゼロではありません。麻酔に際して、事前の診察、検査や、モニター(心電図等)をしながら慎重に行います。
2 肥満になりやすい
どうしても、去勢した子は太りやすくなります。食事の種類や量などでコントロールするのが良いでしょう。
これらのことも、ふまえながらご家族で話し合っていただき、決めてください。
犬の避妊について
避妊手術とは、雌犬の卵巣もしくは卵巣と子宮の両方を摘出する手術です。これを行うことで、発情や妊娠をすることがなくなり、いくつかの重要な生殖器疾患を予防することができます。
おうちの子にとって重要な問題ですので、メリットとデメリットを比較し、ご家族で十分にお話し合いをして決めてください。
避妊手術の目的(メリット)
避妊手術によって得られるメリットは、乳腺腫瘍や避妊手術を主とした生殖器系の病気の予防、そして発情に伴うストレスの軽減です。
1 病気の予防
避妊手術をすることによって予防できる代表的な病気は次の2つです。2つとも高齢のワンちゃんでは、発生率がかなり高い病気です。
- 乳腺腫瘍
乳腺と呼ばれる乳汁を分泌する腺にしこりができる病気です。悪性の場合は肺に転移して亡くなります。良性であっても腫瘍が大きくなって表面が膿んでくることがあります。すると、ワンちゃん本人だけでなく、ご家族の生活の質も下げてしまいます。2回目の発情の前までに(目安としては7ヶ月齢〜1歳半くらいまで)手術を行うと乳腺腫瘍の発生予防効果があります。
犬の乳頭(黄色)は左右5個ずつ。その間に乳腺(赤線)があり、ライン上にしこりができる。 乳腺腫瘍の術後の傷。犬の乳頭は左右5個ずつあり、乳腺も長いため広範囲に切除する事が多い
- 子宮蓄膿症
子宮蓄膿症は、子宮が細菌感染(主に大腸菌)し、子宮内部に膿がたまる病気です。ほっておくと死亡する確率が高いです。避妊手術をしてしまえば、子宮蓄膿症にかかることはありません。行う時期も特に限定はありません。
子宮蓄膿症の子宮。子宮内に膿が溜まって、ボコボコと腫れている。
2 発情によるストレスの軽減
犬の発情は、おおむね半年に一度くらい来ます。人間と暮らす上で発情による問題もありますが避妊手術を行うことで防ぐことができます。
- 偽妊娠の予防
ホルモンの働きによりあたかも妊娠しているかのような行動を取ることがあります。これを偽妊娠といいます。
神経質になったり、食欲が減るなどの変化があります。
- 発情出血がなくなる
発情に伴い外陰部から出血しますが、発情が来なければそれも起こりません。発情期だけオムツを履かせて床が汚れるのを防ぐといったことも必要なくなります。
避妊手術を行う上でのリスクやデメリット
避妊手術を行う上でリスクや手術によるデメリットもあります。避妊手術を行うかどうかの判断をする参考にしてください。
- 全身麻酔のリスク
全身麻酔をかけなければいけません。若い子では低いですが、ゼロではありません。麻酔に際して、事前の診察、検査や、モニター(心電図等)をしながら慎重に行います。 - 肥満になりやすい
避妊をした子は肥満になりやすい傾向にあります。フードの量の調節や、避妊後用のフードに切り替えてコントロールしましょう。 - 尿失禁
確率は低いですが避妊をした子とそうでない子を比べると、尿失禁を起こす様になる割合が多いという報告があります。 - その他、まれに縫合糸に反応してしこり(腫瘍)を形成してしまうこともあります。(縫合糸反応性肉芽種)
このようにメリットとデメリットをよく理解した上で検討していただき、総合的に判断していただくと良いでしょう。ワンちゃんとご家族にとって、一番いい選択ができるよう願っております。
歯科について
犬や猫もある程度の年齢になると、歯石がついたり、歯肉炎をおこしたりと歯のトラブルが多かれ少なかれ出てきます。予防としては、歯磨きが一番いいのですが、子犬のうちから慣れさせていないと、炎症が起こってからでは痛くて触らせてくれなかったりします。
そこで、歯石取りや、ダメになっている歯を抜く処置をするわけですが、基本的には全身麻酔をかけることとなります。
もし麻酔をかけずに行うと、急に動いて危険であると同時に押さえつけて処置をすることにより恐怖を与えて口を触ること自体がトラウマになる場合もあります。
なにより、処置が中途半端になってしまい、歯石は取れて見た目はきれいになっても、歯に細かい傷がついてしまってかえって歯石がつきやすくなる場合もあります。(日本小動物歯科研究会のHPもご参照ください→http://sa-dentalsociety.com/)
主な処置
- 歯石を除去
- 歯周ポケットを綺麗に処置
- 悪い歯の抜歯
- 歯科レントゲンで歯根のチェック となります。
歯科処置を行った子は、口臭が劇的に軽減されるだけでなく、活動的になったり、以前よりよく食べるようになったり、元気になることが多いです。特に、猫ちゃんは抜歯することで口内炎が良くなるので効果が実感しやすいかもしれません。やはり、口の中の状態が悪いというのは、われわれが考えている以上に、動物にとって負担となっているようです。
もちろん全身麻酔にはリスクも伴いますので術前検査の上、おこないます。お口の状態が気になる方はご相談ください。
犬の心臓病について
犬の心臓病で一番多いのは僧帽弁閉鎖不全症という病気です。高齢の子は特に注意が必要です。
- 僧帽弁閉鎖不全症とは
心臓の部屋と部屋を仕切る僧帽弁という弁が、閉じにくくなってくるために、血液の逆流が起こって徐々に心機能が落ちてくるという病気です。
チワワやマルチーズといった小型犬によく見られ、また、キャバリアは好発犬種としてよく知られています。
- その症状は
咳、疲れやすい、失神、呼吸困難が主な症状です。 - 肺水腫
一番危険な状態は肺水腫です。
心機能の低下で肺に血液が滲み出してしまい呼吸ができなくなります。すぐに治療する必要がありますので呼吸がおかしいなと思った場合はすぐに受診しましょう。 - 僧帽弁閉鎖不全の治療
手術による治療もありますが行っている施設が少なく費用も高いため、ほとんどの場合はお薬による治療が行われます。 - 外見ではわからない!?
この病気の特徴は、外見上での変化がないので発見が遅れることがあるということです。疲れやすくなったのも年のせいかなと、見過ごされることもあります。ワクチンや別の理由で来院した時に聴診によって偶然発見されることもあります。しかし、ほとんど病院に来ないような子は、肺水腫になってはじめて気づくこともあります。
狂犬病予防接種について
ワンちゃんを飼ってらっしゃる方は、一年に一回、狂犬病の予防接種をワンちゃんに打たせる必要があります。
世界的にはメジャーな病気、狂犬病とは
狂犬病は、感染すると死亡率ほぼ100%の感染症です。原因は狂犬病ウイルスで、ヒトを含むほとんどの哺乳類に感染し、150以上の国や地域で発生がある現在も広く蔓延しています。海外では、毎年5万人以上が死亡しています。感染した動物に噛まれることにより、唾液中のウイルスが体内に侵入して感染します。
ヒトに感染すると1〜3ヶ月ほどの潜伏期間ののち、倦怠感などの感冒症状から始まり最終的にはけいれんなどの脳炎症状を発症し、呼吸困難に至り死亡します。
日本での取り組み
日本では飼い犬の登録と狂犬病ワクチン接種の普及、野良犬の係留により、1957年を最後に発生が無く、数少ない清浄国となっています。そして、二度と狂犬病を国内にて発生させないよう、狂犬病予防法によって、91日齢以上の飼い犬へのワクチンの接種が、飼い主に義務付けられています。年一回の接種が必要です。
初めて打つと、鑑札と済票が発行されます。鑑札は一生に一度しか発行されませんので、大切に保管してください。済票は、毎年接種されるたびに、発行される「接種証明」です。
接茨木市の方は、済票や鑑札発行手続きも当院でできます。
他市の方も狂犬病ワクチンの接種が可能です。接種後、接種証明書をお渡ししますので各市の保健所や市役所でお手続きをお願い致します。
ワンちゃんやご家族自身を守るためにも狂犬病ワクチンの接種をお願い致します。
フィラリアについて
フィラリア症は、フィラリア(犬糸状虫)という寄生虫によって引き起こされます。
長さ20〜30cmほどの細長い虫で犬の心臓に寄生します。そのため、心臓がうまく機能しなくなり、腹水がたまったり咳をするなどの症状を起こし、亡くなってしまいます。これが、フィラリア症です。
フィラリアは蚊が媒介します。
寄生したフィラリアが子虫を犬の血液中に排泄
↓
蚊がフィラリア症にかかった犬の血を子虫ごと吸う
↓
蚊が他の犬の血を吸うときに子虫を感染させる
という経路を取ります。フィラリア症は茨木市でも陽性犬はまだまだいますので、ワンちゃんの身を守るためにも定期的な予防が必要です。予防期間は5月〜12月です。
当院では、
・月1回の飲み薬
・年1回の注射(2月と3月に実施)詳細はこちら
を用意しておりますので予防をお考えの方はご相談ください。